「CO2・25%削減」で日本人の年収は半減する
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【価格】
¥ 798
【メーカー名】
幻冬舎
【カスタマーレビュー】
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■いろいろと話題の著者がエネルギー問題を斜めからの視線で斬りまくるというのが本書のコンセプトでしょうか。
一種、タブーとなっている領域に科学者としての知見をもとに新たな視点を提供するというのはある種、著者のおきまりのパターンです。
著者は科学者ということもあり、公表されたデータや論説をもとに日本で広く信じられている「石油はもうすぐ無くなる」「エネルギー問題は石油問題である」「原子力は危険である」「自然エネルギーがエネルギー問題を解決する」といった「神話」を次々と否定していきます。この辺りの主張は著者の新たなものではなく、様々なところで公表されており、信頼性のある見方であることは確かです。また原子力のように「原子力自体は自然にあふれている」「原子力は科学でなく人災の問題である」といったように大雑把に捉えるのではなく、一つ一つの要素に分解し、自体を精密に分析していこうとうという立場は日本のマスコミには弱い部分ではないでしょうか。水力発電・風力発電で指摘するように単に二酸化炭素の排出だけでエコか判断するのではなく、周囲の自然や人間への影響といった巨視的な見地も必要です。一面的になるか総花的になるか極端になりがちな日本の世論やマスコミけの継承でもあります。
ただ、なんでも「嘘」「歪曲」といった結論に結びつけるのはどうかと思います。
同じデータを見ても観察者によって解釈が変わるということは著者も重々承知のはずですが・・・「あれは嘘で自分の言うことが正しい」というような態度は世論を間違った方向に誘導していると著者が指弾するマスコミや学者たちと同じ態度であり、やはり一定の政治性・思想性を持っていると言われても仕方ないと思います。
一般向けの著作なのでわかりやすい論の進め方も必要だと思いますが、まだまだわかっていないこともわかっていることも、政治的な歪曲も、科学的な立場の違いも十把一絡げにする姿勢はどうかと感じます。
著者が最後に述べているように技術の進歩が問題を解決すると思います。まさに未来のことは誰にもわからないのですが、科学的な思考や行動を大切にしていくことが大切だと感じました。
■「温暖化に関して、私が最近、不思議に思うことがあります。
それは、科学者の私が十分に論文を読んでも、21世紀に、この地球が温暖化するのか、
寒冷化するのかはっきり判断できないのに、テレビを見ていると、きれいな女優さんが、
「温暖化するのは確実だから、子孫のために何かやらなければ」などと言っていることです。
そういう方が自信たっぷりに「21世紀は温暖化する。大変なことが起こる」と言っていて、
科学者の私が「わからない」というのは、実に奇妙な現象です」
海洋性気候
「「水と空気」が "共存" するところでは、「温度は水の温度に近づく」・・・
日本のように四海を海(水)に囲まれている国の気温は、海水の温度に近づきます」
温暖化するにしろ、寒冷化するにしろ、海洋国家・日本では、極端な気温の変化は起こりにくい・・・
「アメリカ、中国、ロシアなどの大国は陸地が多いので、気候が急激に変わると大変です。
奥地は灼熱の地獄になります。しかし、そんなときでも・・・日本だけは大丈夫なのです」
水資源の少ない内陸国家は、温暖化や寒冷化の影響をもろに受けやすい・・・
「温暖化すれば、海洋国家の日本は相対的に有利になります」
「どこの国に、自分の子供を犠牲にしてまで、「地球市民」を強調し、遠い国を助ける人がいるでしょうか」
日本には、気候変動よりも喫緊の課題が山積みである・・・
■ 本書の気になる点は、タイトルがどぎつい、論旨が粗い、です。しかし、大筋は日本の現状へ警鐘を鳴らすタイムリーな内容だと思います。
論旨が粗いについては、例えば、「年金がなければ老後を過ごせない」という意見があるが、昔はそんなものなかった(p230)。という論旨。->昔は、リタイアしたら、本家の傍らの小さな隠居家へ移って、子供に面倒を見てもらっていたのです(私の育った頃はそうでした)。200年ほど昔は、楢山節考だったかも知れません。
プリウスは、車が重たくなる。道路を傷める。だから「むしろ石油を多く使う」。->昨年5月に発売されたプリウスは年間販売1位(20万台弱)となりました。今まで、もっと重く大きく燃費が悪い車に乗っていた人が、発想を変え始めたと考える方が素直です。プリウスなどによって、石油消費量がかなり減るでしょう。
石炭・原子力以外の自然エネルギーを過小評価されています。石油なし、バイオ(木材)のみで生活していた昔の田舎の経験がありますが、悲惨ではありません。冬の暖房は堀コタツに炭火を入れたもので十分暖かでした。現在の、キッチン+リビング+吹き抜けでエアコン暖房つけっぱなしは、エネルギーロスが無駄に大き過ぎます。
武田さんの気になる点は、小さな省エネ工夫の積み重ねを、過小評価される点です。
それでも、本書を評価します。
科学技術者の多くは、判断できないのではなく立場上発言できないので、社会全体の軌道修正の力になりにくい面があります。武田さんはダーウィンの「勇気をもって見れば真実が見える」を引用されていますが、至言です。見たくないけれど、見据えて、今から対策をとるべきだと言う本書の大筋は、読むべき価値があります。
2070年には現在の石油文明はほぼ終わっていると知る人は予想しています。困った事態に突入する時期は不確定ですが、遅くとも2050年までに、国や個人のインフラや経済や生き方を大変更しないと悲惨な事態になるでしょう。世界は大飢餓に襲われている可能性は高いと思います。根拠は、成長路線で開発国へ巨額の資金援助をし資源消費と人口増加を助長していること。世界人口が80億人になり石油が底をつくと、石油大量消費で底上げしていた農業生産は半減する。世界人口の半数分の食料の絶対量が不足する事態になると予想されるからです。
日本を救う中核は、技術のイノベーションです。武田さんのおっやるように、日本のなけなしの資金を散在しないで有効に未来を生き延びるために投資するべきでしょう。怠れば、悲惨な未来が来るのではないでしょうか。
■ばしばしと再生可能な次世代エネルギーを斬りまくる本書は、読んでいてやはり面白い。主流とかかなり離れた著者の「異説」にも多々うならされる。補助を何十年と出し続けても、家庭での太陽光発電は一向に採算ラインに乗ってこない。石油の代用にはならない、という指摘には説得力を感じた。また、太陽光発電装置の製造過程の二酸化炭素コストやハイブリッド車への疑問、省エネ家電を買うとその分大型化し、電気を余計に食ってしまうなどの逆効果仮説はなるほどと思う。
ただ、データの裏打ちが少なく、著者の思いついたままに書いている部分が少なからずあるので、再読すると、うーんと思う所も少なくない。風力発電の項で、エネルギー保存則から、風車の風上と風下では風の強さが違う、というのだが、にわかには信じがたい。たとえ水力発電の水が発電に使われてもすべて高きから低きへ流れるように、風の強さも風力発電にはあまり左右されないと思うのだが、どうなのだろうか。また、膨大なデータが取られている温暖化の影響について「確実ではない」と言いながら、風力発電で風が減ったら自然が破壊されると断言するのもいかがなものか(しかも、「風力発電の影響を計算できるほど今の科学は進歩していない」と言っているにもかかわらず)。あたかも風力発電で風がなくなってしまうかのような書きぶりはちょっと解せない。私は、温暖化と風力発電とでは、データが多く出されている温暖化の方が、明らかに自然への影響があると思う。
とはいうものの異説だらけの本書は、温暖化阻止を自明のものとしている今の日本で、もっと受け入れられていいのではないか、と思う。もっとも著者もデータで武装する必要があると感じるが。
■本書の執筆目的は、近頃はやりの「CO2削減原理主義=人類最大の目的はCO2削減」に「警鐘を発する」ことですよね。
むろん、人類最大の目的は「人類の生存環境を確保する」こと。そのためには「食料とエネルギーの確保」はかかせません。本書には書かれていませんが、「きれいな空気」と「安心して飲める水」も必須条件です。
「観点」として、本書は間違っていません。ただし、検証があまりに不十分。説得力に乏しい!
例えば石油は太陽光の3万倍の力を出すことができると書かれていますが、計算根拠が一切書かれていないので、第三者が検証することができません。
計算根拠は何も複雑な数式である必用はありません。例えば電気自動車とガソリン自動車の性能(航続距離)を比較するのに、電気自動車は150kgのリチウムイオン電池で航続距離は約150km、ガソリン自動車は50kgのガソリン(タンクを含む)で航続距離は約500km。こう書いただけで、航続距離に関してガソリン自動車は電気自動車の約10倍の性能があることがわかります。これぐらいなら直ぐ書けるはずです。
石炭と石油の埋蔵量も「誤解」を招きやすい。石炭の埋蔵量が8000年だと誰も言っていません。ウランの埋蔵量も、いちばん少ない数字では100年弱。1000年単位でもたせるためには、軽水炉で使いっぱなしではだめで、核リサイクルのための高速増殖炉が必用。でも「もんじゅ」が頓挫したのはみなさん御存じですよね。核融合は更にハードルが高い。頼みの核エネルギーも「万全」とは言い難い!
したがって、「CO2削減で地球温暖化を防止する」ことが最優先かどうか(私は最優先とは思わない)は置いておいても、「文明社会を支えているエネルギー」確保のために、たゆまぬ「省エネの推進」と「代替エネルギーの探索」は必用です。
著者の観点は間違っていませんが、一部「事実誤認」があることと、自説を通すための「理論武装」があまりになされていないのが残念です。